利他の心で乗り越えられる壁がある
「利他」について考える
こんにちは。今日は「利他」という言葉について少し感じるところがありましたので、お話しさせていただきます。
「利他」というのは、他を利する、つまり他人のためになるような行動を指します。仏教的には、こうした行動が功徳を積む良い行動だとされていますが、実際に他人のために何かをするというのは、決して簡単なことではありません。また、他人のために尽くしても、必ずしも報われるわけではないですよね。
自利と利他のバランス
だからこそ、自分自身の利益を考えることも大事です。仏教だからといって「自利はダメで、利他に尽くしなさい」と言っているわけではありません。自分の利益があってこそ、利他も成り立つのです。
しかし、さらに一歩進んでいくと、他者のためにしていた行動が、最終的に自分のためにもなってくる、そんな段階に入ることがあると言われています。実際、何か困難を乗り越えるとき、自分だけの力ではどうにもならないこともあるのではないでしょうか。誰かのためにという気持ちが加わることで、大きな力が湧いてきて、その壁を越えられる、そんな瞬間があるのだと思います。
おじいさんとおばあさんのエピソード
いつかのお参りで、最近体調が悪いおじいちゃんとおばあちゃんのご夫婦のお話を伺いました。お二人とも病気や怪我に苦しみながらも、助け合って生活されています。おじいさんは長年がん治療を受けており、抗がん剤の副作用で体が辛かったそうです。それでも健康のために毎日1時間以上歩いていたそうです。
しかし今年の夏、おばあさんが骨折して入院され、おじいさんも体調が悪く、お盆のお参りをお休みされました。その後の様子が気になっていたのですが、最近お話を聞いたところ、おじいさんは「自分がしっかりしなければ」と強く思ったそうです。おばあさんが退院してもすぐに元通りには動けないので、自分が支えなければと考え、また歩くことを再開したのです。
家の廊下を何十往復も歩くことから始め、少しずつ外に出て、今ではまた遠くまで歩けるようになったそうです。一方でおばあさんも「おじいさんは家に一人で大丈夫か」と心配しながら、一生懸命リハビリを頑張っていました。こうしてお互いを思いやる気持ちが、辛いリハビリや運動を続ける力となり、今ではまた一緒に生活できるようになったのです。
他者を思うことが自分の力になる
このご夫婦の姿を見て、他者のためにする行動が、結果的に自分の力となって戻ってくることがあるんだと改めて感じました。もし、自分自身の体調のためだけに頑張っていたら、ここまで頑張ることはできなかったかもしれません。しかし、パートナーのためにという思いが、辛い運動やリハビリを再開させる大きな力になったのだと思います。
終わりに
おばあさんは笑いながら「帰ってきたら喧嘩もするし、『なんで帰ってきたんやろ』なんて思うこともあるけど、それもまたいい関係なんだ」とおっしゃっていました。それも本当に素敵な、何でも言える関係だなと感じました。
今日はそんな「利他」について感じたことをお話ししました。皆さんも、今日一日が穏やかな日となりますように。それでは失礼いたします。