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2020-04-29

お寺の鐘について

「一身弁じ難く、衆力成じやすし」

先日、全日本仏教青年会から「祈りの鐘」を響かせましょうというお便りが、青年僧侶あてに回ってきました。

お寺の鐘というのは昨今難しい状況にあります。

除夜の鐘を鳴らすのが近隣への迷惑になるということで、日中に繰り上げてするなどの対策をする寺院も少なくないようです。

しかし、鐘というのは実はお寺には不可欠なものです。

お寺の鐘のはたらき

従来、お寺というのは集団生活の場であり、そこに住む僧侶たちが一斉に時刻を知り、規則正しい生活を送るために必要なものでした。現在では集団生活をする寺院は少ないですが、修行道場でも鐘を鳴らし、生活の合図となっています。また地域に時を告げるために毎日鐘を鳴らしているお寺もあります。

兵庫県 新温泉町 巖山寺の鐘堂

正式な僧侶となる儀式(受戒)でも、鐘は重要な役割を果たします。
僧侶は自分たちが生きる上での規範となる、「戒」というものを授かります。

厳かな儀式と、僧侶自身の真剣な気持ちとが合わさると、戒が自分の体の中に飛び込んでくるのだそうです。

その戒が動き出し、体に入ってきたことを表して、鐘の音が鳴らされます。

比叡山で授戒が行われる戒壇院 https://www.hieizan.or.jp/page-gallery

正明寺にも小さいですが、玄関に鐘があります。

これは法要の前の集合などの合図として鳴らすものです。20分前に一番鐘、10分前に二番鐘、法要の開始で三番鐘を鳴らします。

たまに来られたお客様が、呼び鈴と思い叩かれることがあります。聞こえないこともありますので、インターフォンを押してくださいね。

以上のように、鐘とお寺は切っても切れない関係です。

とはいえ難しい話は抜きにしても、鐘の音というのは聞く人の心を和らげます。

大晦日に除夜の鐘をならして煩悩を払う。それは本当に一時的なものかもしれませんが、事実心が穏やかになっていきます。

「祈りの鐘」

そして今回は、その鐘の音を、祈りのために鳴らそうという運動です。

新型コロナウィルスにより、多くの死者・苦しむ人が出ています。

直接ウィルスに罹患するわけでなくても、先の見えない不安に苦しむ人も多く、生活を成り立たせる仕事もままならない、また医療従事者を始め、社会状況に対応するため奔走される方々。

その人たちに追悼や感謝の想いをこめ祈ります。

正明寺では大きな立派な鐘はありませんが、下記の次第に則って実施します。

賛同いただける方はご自宅のお仏壇の鐘でいいと思いますので、ぜひ時を合わせて祈りの鐘を共に響かせましょう。共にその感謝や追悼の念を送りましょう。


「一身弁じ難く、衆力成じやすし」

これは比叡山延暦寺を開いた伝教大師最澄が、比叡山上に鐘を造立したいという願いをこめて作った文の一部です。

自分一人の身では難しいことでも、多くの人の力があれば成し遂げられる。
そんな言葉です。

伝教大師最澄の言葉が、現在にも伝わっていたからこその、「祈りの鐘」なのかなと思います。

○期間・時刻 :4月29日(祝)~5月6日(振休)午後5時
○鳴鐘数・間隔 :基本30秒間隔で10回(約5分間)
○鐘の音に込める祈り :追悼・慰霊、応援・激励、感謝・敬意、慰労・称賛、 勇気・希望、自制・自粛、祈願・誓願 などについて 各位の想い、お考えに沿った具体的な祈り

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